「なんであの子は恋愛に依存しやすいの?」そんな疑問を持ったこと、ありませんか?実は、恋愛体質や“恋に落ちやすい人”には科学的にも裏付けがあり、「エモフィリア(Emophilia)」という心理学用語が存在するんです。SNSには「また恋に落ちた」「すぐ好きになっちゃう」といった投稿が溢れ、ドラマのキャラクターや有名人の恋多きエピソードもすぐ話題に。エモフィリアはただの“恋愛好き”とは違います。その特徴や背景、具体的なエピソードなど、知るほどにいろんな人との接し方がわかってくるんです。
心理学の研究によれば、エモフィリアとは「恋愛関係に極端なまでに強い魅力を感じ、頻繁に恋に落ちる傾向」を指します。日本語でぴったりの表現はありませんが、よく「恋愛体質」とか「恋に生きる人」なんて呼ばれることが多いですね。文字通り、Emophilia=Emo(感情)+philia(愛好)なので、感情への愛着がとにかく強い。彼女や彼らは、知り合ってすぐ好きになったり、新しい恋に目がいきやすかったり、環境が変わるたびに心が動きます。恋愛が始まると自分でも止められないほど夢中になり、その相手で毎日頭がいっぱい。でも、冷めるのも早かったり、次への切り替えがすぐできたり、日常の些細な出来事がドラマチックに感じられたり。
アメリカの心理学者アダム・B・ロメロ博士(2016年発表)は、科学的にエモフィリア傾向が高い人には共通点が3つあると指摘しています。ひとつは新しい出会いに惹かれやすく、人見知りせずすぐ距離を縮めること。ふたつめは、恋愛をしていないときに不安や空虚感を抱きやすいこと。みっつめが、関係が深まると急激に熱中しやすいところ。恋愛映画や少女漫画にすぐ感情移入して涙がでてくるタイプも多いとか。最近の調査(2022年、日本心理協会)によると、成人の約8%が“明らかなエモフィリア傾向を持つ”そう。決して珍しくないし、他に問題がなければ悪いことでもありません。
この特徴は、ジェンダーや年齢に関係なく見られます。高校生女子、30代男性、既婚女性など誰にでも現れることがあるし、自分で「恋愛に振り回されがち」と気づいている人も多いです。ちょっとしたメッセージのやりとりで一日中ドキドキが止まらなかったり…。特にスマホ社会では出会いも多くなり、エモフィリアの傾向は目立ってきているといっても過言じゃありません。
なぜエモフィリアになる人がいるのでしょう?大きな理由は、性格や育った家庭環境、それから神経伝達物質などの生物学的要因が関係しています。生まれつき感情表現が豊かだったり、両親から愛情深く育てられたり、子供の頃「かまってほしい!」と感じた経験が恋愛依存を生みやすいとも。心理学の臨床実験では、幼少期の愛着体験が恋愛傾向に影響するというデータも出ています。エモフィリア傾向の人は、自己肯定感が不安定だったり、承認欲求が強いケースも多いです。そのため、新しい出会いや恋愛関係で「自分を認めてもらえる」と感じると、相手に強く依存しがち。
一方で、脳内ホルモンの影響もあるんですよ。恋愛の初期に分泌されるドーパミンやフェニルエチルアミンは、幸福感や陶酔感を一気に高めてくれます。「恋していると何もかも楽しくなる」のは、こうした物質のせい。ところが、この快感を“くり返し求めがち”な人は、恋愛ジャンキーになりやすいんです。「あのときのドキドキをもう一回!」と、また恋に飛び込んでしまう。実際、同じ人と交際していると刺激が落ち着くため、次の新しい恋愛を求めることも。
「恋愛に恋する人」と聞くと軽く感じられますが、実は心の奥で「誰かと深くつながりたい」「自分を受け止めてほしい」という不安や寂しさが関係していることもあります。仕事や学校での自信のなさ、孤独感、自己評価の低さが引き金になるケースが多いんです。エモフィリアは、ただ単に恋多き人というだけではなく、様々な心の動きや経験が形を変えて現れている現象なんですね。
エモフィリア傾向が強いと、日常でどんな影響があるのか?恋愛のときはポジティブなエネルギーいっぱいで、感受性も高まります。ただ、仕事や勉強、友達との付き合いに恋愛が優先されがちで、「恋人からLINEが来ないと手につかない」「交際してないと寂しさで落ち込んでしまう」といった悩みも。周囲からは「恋愛のたびに別人みたい」と言われたり、恋愛中心になりすぎて友情や家族との関わりが減ってしまうこともあるんです。
恋愛することで毎日が楽しくなる一方、依存状態に近くなってくるとトラブルも起きやすい。嫉妬や不安感がぐるぐるして相手を束縛してしまったり、ちょっとした一言に過剰に反応して落ち込んだり。現代のSNS社会も、エモフィリア傾向を助長しやすい環境。マッチングアプリやLINEで新しい出会いが多い分、恋愛が回転ドアみたいになりがち。ある2023年の調査によると、恋愛体質を自覚する20代女性の29%が「一年で3回以上恋に落ちた経験」があると回答。
こんなふうに、エモフィリアは良い面と困る面、両方を持ち合わせています。「人生、恋愛で彩りたい!」と前向きにとらえる人もいれば、「何度も恋して疲れる」「いつも心が揺れっぱなしでしんどい」という声も。最悪の場合はメンタルのバランスを崩したり、自己評価がガクッと下がる場合も。誰にも相談しないで抱え込むと、恋愛のブレーキがきかなくなることもあるので要注意です。
「エモフィリアかも」と感じる人が、健康的な人間関係を築くコツはいろいろあります。まずは自分の恋愛傾向や、恋愛に対して「どんな期待」を持っているかをしっかり把握しましょう。そのうえで、自分の時間や友人との距離感も大切に。恋愛以外の趣味や仕事に目を向けて、毎日を充実させることが重要です。たとえば、ランニングや料理、読書といった“自分だけの楽しみ”を見つけると、心のバランスがとりやすくなります。
実際、「恋愛体質を卒業したい!」と思っている人は、依存しそうになったら距離をとる練習や、何より“自分の機嫌は自分で取る”ことから始めているそうです。やみくもに恋愛を否定する必要はありませんが、「恋に生きても、恋に飲み込まれない」ことが理想。
『人は恋をする生き物だけど、恋だけに生きる必要はない』(臨床心理士・山本美里さん)このバランス感覚が、もっとも大切です。
自分がエモフィリアかどうか気になったら、まずは簡単なセルフチェックを。下記の質問に3つ以上当てはまる人は、エモフィリア傾向が強いかも?
あてはまる部分が多ければ、少しだけ恋愛のリズムを変えてみるチャンスです。たとえば、恋愛以外のイベントやコミュニティに参加してみる、家族や昔の友達との付き合いも大切にするなどで、自分の世界が広がります。もし苦しいと感じた場合は、カウンセラーや臨床心理士など第三者の力を借りても大丈夫。近年は「恋愛依存専門」のカウンセリングも人気です。2024年の厚生労働省発表によると、恋愛依存やエモフィリアに関する相談数は過去5年間で1.7倍に増加しています。
発症傾向 | 発症率(推定) |
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日本人全体 | 8% |
20〜29歳女性 | 14% |
恋愛相談平均数/年(全国) | 3.9件 |
「恋愛体質」とうまく付き合うカギは、自分のペースで生きること。自分のことも恋愛も大事にしてこそ、本当の幸せや満足感に近づけるはず。ちょっとした息抜きや、誰かと深くつながらなくても心地よい時間を持つことで、気持ちがぐっと安定しやすくなります。恋する気持ちは素敵なパワーなので、自分なりにコントロールしながら上手につきあっていきたいですね。