「若い時と同じ薬の飲み方でいいの?」なんて思ったことありませんか。高齢になってくると、身体の中ではいろんな変化が起きています。昔は気にしなくても問題なかった薬が、今ではトラブルの元になることも珍しくないんです。2019年の厚生労働省の調査でも、75歳以上の約6割が一度に5種類以上の薬を飲んでいます。私の母も7種類の薬を服用しているけれど、薬局の薬剤師さんとお話しした時「飲み合わせなら任せて!」と心強く言われ、でも家族のサポートも必要だと実感しました。高齢者の薬の話って、知っておくと家族みんなが助かります。
高齢者の身体の変化と薬の効き方
高齢になると、身体の中の水分や筋肉量が減って、脂肪の割合がぐっと上がってきます。肝臓や腎臓も、30代の頃に比べて働きがゆっくりになるんですよ。よく聞く話だけど、薬が体に残りやすかったり、効果が強く出たり、副作用が出やすくなったりします。たとえば、血圧の薬や眠くなる薬だとフラフラして転びやすくなったり、安定剤や睡眠薬は昼間でもボーッとする原因になったりしがち。
厚労省の2019年医療経済実態調査では、75歳以上の約90%が何らかの慢性疾患で受診し、約65%が同時に2つ以上の病院やクリニックに通っている、と。私の夫・健一のお母さんも、糖尿病でかかりつけ医、腰痛は整形外科、目薬をもらいに眼科…と病院巡りが習慣になっていました。この流れだと、薬がどんどん増えていくのが現実です。
薬を分解・排出するのに時間がかかるので、一般的に「同じ量の薬」でも高齢者には効きすぎてしまうことがあるんです。しかも、胃腸も弱ってきて、飲み込みがうまくいかなかったり、胃薬や痛み止めでお腹をこわすリスクも高め。特に注意なのが鎮静作用のある睡眠薬や抗不安薬、心臓のお薬、そして強い鎮痛剤。この辺は思いがけない副作用や転倒、せん妄(急な混乱や幻覚)の引き金になることもあると、薬剤師さんから力説されました。
実際に問題が起きやすい薬について厚労省の『高齢者医薬品適正使用指針(2021年)』でリストアップされています。以下は代表例の一部です:
薬の種類 | 注意が必要な理由 |
---|---|
睡眠薬 | 転倒・ふらつき・記憶障害 |
抗不安薬 | 意識がぼんやり・混乱 |
利尿薬 | 脱水や電解質異常 |
NSAIDs(痛み止め) | 胃腸障害・腎障害 |
抗コリン薬 | 便秘、尿が出にくい、認知症悪化のリスク |
こんなふうに、どんな薬にどんなリスクがあるか知っておくと、不調の原因に心当たりがつくことも。軽いむくみや便秘、眠気、立ちくらみを単なる「老化かも」で片づけず、薬の影響も疑ってみてほしいです。

薬の飲み合わせ・ポリファーマシーの落とし穴
「ポリファーマシー」って、聞いたことありますか?薬をたくさん飲みすぎている状態で、高齢者の多くがこれに該当します。今や、75歳以上の約6割が同時に6剤以上、10剤以上使っている人もけっこう多いんです。たとえば、血圧の薬+痛み止め+胃薬+安定剤+湿布+抗生剤…と、気づけば1日10錠なんてザラ。厚労省や日本医療政策機構が警鐘を鳴らすのも無理はありません。
薬が多いと何がいけないかというと、思いもよらぬ副作用や相互作用(飲み合わせ)で普段の状態が一気に変わるから。一例を挙げると、血圧を下げる薬と利尿薬を一緒に使って脱水・低血圧になり転倒、痛み止めとワルファリンという血液をサラサラにする薬を重ねて出血リスクアップ──こういうケースが本当に起きています。
しかも、2つ以上の医療機関に通院していると「この薬、すでに持ってるのにまた処方された」という重複も珍しくありません。私が実際にみたのは、婦人科と整形外科で全く同じ鎮痛剤をもらっていた叔母のケース。パッケージも違うし説明もそれぞれバラバラ。家で「これ、いつのだっけ?」と混乱してしまい、結果として効きすぎや副作用が出ることに。
薬の名前や効能が似ていても、中身は少し違う場合も多いです。市販薬やサプリメントも思わぬ相互作用を起こすので注意が必要。たとえば、風邪薬や解熱鎮痛剤(アセトアミノフェン入り)は肝臓に負担をかけやすいですし、グレープフルーツジュースとコレステロール薬の飲み合わせが良くないことも意外と知られていません。
医師や薬剤師には遠慮せず、いま何を飲んでいるか、もらった薬のすべてを正直に伝えることが最大の防御策。薬局で「お薬手帳」を必ず持参し、家族も薬リストを常にチェック。私の周りでも、お薬手帳アプリを使うことで誤飲を減らせた人がたくさんいます。もし薬が多くなってきたら「すべて必要なのか」「飲み合わせは大丈夫か」一度、主治医と真剣に相談するといいと思います。
最近では『かかりつけ薬剤師』という制度が広がってきました。気になったことをいつでも相談できて、複数の病院の薬も一括管理してくれるので、安心感が段違いです。特に、認知症が心配なご家族や一人暮らしの高齢者にはかなりおすすめ。スマートフォン世代なら、お薬アプリを共有するのも効果大ですよ。

高齢者の服薬管理の工夫と家族のサポート
「薬をきちんと飲めているか心配」「飲み忘れた時はどうする?」と、日々感じている人も多いはず。家族ができるサポートはたくさんあります。まず、薬の管理を分かりやすくしてあげること。たとえば、曜日ごとに分かれているピルケースや百均の仕切りボックスに薬をセットする。私も健一のおばあちゃんの薬を、曜日ごと・朝晩分けて1週間分まとめてセット。そうすると、一目で「あれ?飲み忘れた?」と気づきやすいです。
「飲み忘れ防止アラーム」をスマホやキッチンタイマーに設定するのも手。声かけだけだと忘れてしまう人もいるので、機械の力を借りることで家族みんなの負担も軽くなります。また、薬の数が多くて困っている場合は「一包化(1回分ずつまとめて袋詰め)」を薬局でお願いするのもおすすめ。朝・昼・晩でまとめてパックしてくれるので間違いが減りますし、外出先でもサッと持ち運びできます。
高齢者の中には「飲みたくない」「もう治ったから」と自分の判断で薬をやめてしまう人も。ただ、糖尿病や高血圧などは薬を急に辞めてしまうと危険です。本人が納得して続けられるように、薬の理由や必要性を何度でも説明してあげることが大切。医師の言葉を録音して後で聞き返す、パンフレットや説明動画を使うなど工夫すると、理解も深まります。
薬だけでなく、食事や水分、サプリメントも服用のタイミングに影響します。例えばカルシウムのサプリや乳製品で鉄剤の吸収が落ちたり、抗生物質は一緒に牛乳を飲まない方がいい場合もあります。食欲がない時や吐き気がある時、「薬は食後」の意味を必ず医師や薬剤師に再確認してください。
周りができることは他にも:
- お薬カレンダーやチェックリストを作る
- 薬の量や回数を定期的に医師に見直してもらう
- 気になる副作用や変化はすぐ記録して医師・薬剤師に伝える
- 訪問看護やヘルパーさんの力を借りる(「訪問薬剤管理指導」という自宅でのサービスも増えています)
- 認知機能や飲み込み力が低下してきたら、薬の剤形(粉にしてもらう、ゼリーで飲むなど)も相談
薬は飲み続けることも大切ですが、「減薬」に踏み切ることも高齢者の健康維持に直結します。最新の医療現場では、必要最低限の薬に絞る方針がトレンド。「長く飲んできたからやめるのが不安…」という声も本当に多いのですが、「一度やめてみて様子を見る」くらい軽い気持ちで主治医に相談してみてほしいです。
自分の体調の変化は、自分や家族が一番気づきやすいんですよね。「調子悪いな…年のせいかな?」と思った時こそ、薬からトラブルが起きていないかにもしっかり目を向けてほしいです。正しい知識と工夫で、安心して毎日を過ごせる高齢者が増えますように。